運命の扉

「俺らも席着こうぜ。」
「うんー。」

真中敬。

どんな人?

「そんなに考えることか?」

カバンを机にかけながら、優斗が呆れたように言った。

「真中敬って人、そんなに有名?」
「知らない奴がいるなんて、そっちの方がビックリ。」
「興味ないんだもん。」
「今どき珍しい。」
「あんまり男の子にキャッキャするの好きじゃない。」
「莉奈ってさ……好きな人とかいねぇの?」
「えっ?」

なに、急に。

「……いない。」
「そっか……。」
「なんで?」
「いや…。」
「なによ。」
「…俺知ってんだよね。お前が何人かに告られてること。」
「ふぅー。」

あたしは頬杖を付いてため息をする。

優斗には言ったことないのに。

なんで知ってるの?

「意識しないわけ?告られて。」

…………。

するわけないじゃん。

スキナヒトなんていないし。


あたしは……


あたしは………


「しない。ってか、なんで優斗が知ってるわけ?あたしの告られ事情。」

なんか、そういうの嫌だ。

いくら幼なじみでも、知られたくないことってあるし。

「莉紗だよ。」
「えっ?」
「莉紗から聞いてた。」
「なんで莉紗から聞く必要あんの。」
「教えてくれるんだもん。」
「もー。莉紗のバカ。」

独り言みたいに呟く。

優斗には知られたくないから言ってなかったのに。

「莉紗は心配してんだよ。」
「なにを。」
「お前がスキナヒトの話したことないから。」


したことないから。
……か。




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