年下カレシに蜜な罠



「これで、全部ですか?」

水野先生に、授業で配るプリントを持って行くように頼まれて


ふたりで資料室へと入った。



「頼んじゃって、ごめんね?教室に戻るより前に、卯月くんがいたから」


長い指が、紙の隙間を通り抜けていく。



「じゃあ先に「……あ、待って」

ドアノブに触れたときだった。




「知りたくない?」

「……はい?」




「卯月くんが体験合宿だった間の瑠璃ちゃんの様子」

真っ直ぐ、瞳の奥を射抜くような視線を浴びせられ


黙ってしまった俺は――。




何か、ある。

そう感づきながらも。




“知りたい”

その感情に、負けた。


好きになれば
 好きになるほど


相手を独占し、
独り占めしたくなる。


そうやって人は、欲張りになっていく。



あの時の俺は――

一体、
瑠璃の“何を”知りたかったと言うのだろう。


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