最大公約数
あたしは個別塾に通っているんだけど、担当する先生と相性が悪かった場合、先生を変えることができる。ただ、個別塾とはいえ、個人で運営している小さな塾だから、先生がそこまでいないのも事実で、あたしはこれ以上先生を変えるようなら塾から変えなくてはいけなくなる。
家から近い塾はそこしかないし、そこの塾は先生が全員東大出身で実績もあるから、多少値は張るものの、環境は整っていた。

「なつみ、次の先生で最後だから。もう次からは大手の集団塾にします」
「やだよ集団塾なんて」
「じゃあその先生の下で頑張ればいいでしょう。物理化学数学を受け持ってもらうから。英語は引き続き前の先生で、理系科目は新しい先生ね。いい?」

集団塾なんて、たくさんの人が在籍する中指名されて、答えられなかったら赤っ恥だ。絶対に嫌だ。自分で理解してないうちに授業がどんどん進んでしまうところも嫌だ。昔は集団塾に通っていたけど、すぐにやめてしまった。塾で友達がいなくて、周りが友達同士で隣り合って座る中、あたしだけぽつんと一人で座っていたというのもやめる原因のひとつだった。

「明日の夜7時からよ、わかった?」

はあい、と生返事をしてポテチを齧る。
どうせ今度の先生だって合わなくてチェンジしてしまうに違いない。
あたしはそう思いながら、母さんが置いていったリモコンを取り、電源をつけた。
犯人はあたしが予想していた通り、目つきの悪いフリーターの男の人だった。
殺人トリックが知りたかったのに犯行動機を語り始めたそのシーンを見て、もうどうでも良くなってチャンネルを変えた。
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