ジャス
スーパーヒーロー
 明治二年(1869年)冬
    函館

 この年、一つの時代が幕を閉じた。


 北の大地を雪が覆い尽くしていた。

 ゴウゴウと吹き抜ける吹雪。

 そのただ中を、二人の男女が行く当ても無くさ迷っていた。

「…大丈夫か…」
 男が女の身を案じ声を掛けた。

「ええ。私は大丈夫です。それより“新太郎”、傷の具合はいかがですの?」
 女が男を見つめる。

「傷など大した事ない。…これぐらいの傷で音を上げては、志し半ばで散っていった“同士達”に申し訳がたたん。」
 男がグッと前を見据える。

「いたぞ!あそこだ。」

 不意に後方から声があがった。

「くっ!ここで捕まってたまるか。…我らの“理想国家樹立”までは逃げ続けてやる。」
 二人は寄り添い合いながら逃げ出す。

 こぼれ落ちた理想を掴む為、幾多の仲間達の無念を晴らす為に…。
< 1 / 79 >

この作品をシェア

pagetop