恋時雨~恋、ときどき、涙~
レジに向かうと、健ちゃんも何かを購入したようで、手のひらサイズの紙袋を持っていた。


わたしが肩を叩いて紙袋を指差すと、健ちゃんは「何でもねんけ」と言い、慌てた様子でそれをズボンのポケットに押し込んだ。


「外で、待ってるんけな」


健ちゃんは1人、さっさと売店の外へ出ていった。


会計を終えて売店を出ると、健ちゃんが空を見上げていた。


夏空に、ひこうき雲が長く続いていた。


わたしが肩を叩くと、健ちゃんがにっこり笑った。


「真央、時間、まだ大丈夫か?」


スマホで時刻を確認すると、15時40分だった。


夕飯までに帰る、とお母さんたちには言ってある。


わたしは微笑みながら頷いた。


「美岬海岸、行こう」


わたしが頷くと、健ちゃんは両手を伸ばして青空を仰いで言った。


「今から行けば、着いた頃には、きれいな夕陽が見れるんけ」


わたしと健ちゃんは、自然に手を取り合い、動物園を後にした。






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