恋時雨~恋、ときどき、涙~
「例え、どんなに辛い壁に当たったとしても、簡単に諦めちゃいけないよ。何があっても、いちばんに、健太さんを信じるんだよ」


わたしは、しっかりと頷いた。


信じる。


でも、順也は寂しい顔をした。


「人を好きになって、付き合うって事は、そういう事なんだよ」


信じることが何よりも大切だよ、と順也は優しい手話を添えた。


ぼくと、しーは、それができなくなってしまったから、離れてしまった。


小さく両手を動かして、順也は目を伏せた。


「果江さんが帰ってきても、真央は、健太さんを信じないといけないよ」


分かってる。


わたしは頷いた。


でも、この時、わたしは本当に理解できていたのだろうか。


たぶん、できていなかった。


安易に考えすぎていたのだ。


健ちゃんの心と通じ合えた事に浮かれて、何も分かっていなかった。


何があっても健ちゃんを信じろと言った、順也の言葉の意味を、分かっていた気でいたのだ。


〈大丈夫。わたし、健ちゃんを信じる〉


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