恋時雨~恋、ときどき、涙~
駅の改札口で別れる時、幸が言った。


「静奈は、忘れようとして苦しんどる。助けたってえや。私じゃ、何ともならん。真央の力が必要なんや」


わたしは、頷くことができなかった。


だって、本当にどうしたらいいのか分からなかった。


一体、わたしは何をしているんだろう。


わたしにできる事って、何なのだろう。


バスケットボールの練習をしている順也の元へ向かいながら、わたしはハッとした。


わたしが静奈にしてあげられる事について、健ちゃんに相談しようとスマホをタップした。


その時に、ハッとしたのだ。


健ちゃんとのライン画面をスクロールしてみる。


わたしは、溜め息を落とした。


足元の冷たそうな色のアスファルト上を、乾燥した木の葉がくるくる回りながら転がっていた。


わたしと健ちゃんは、ここ1週間ほど、全く連絡をとっていなかった。


そんな事に気付いたのは、もう、初雪が降りそうな頃だった。


わたしは、慌てて健ちゃんにラインをした。


返信はすぐに来た。


健ちゃんはここ1週間ほど、忙しかったらしい。


とにもかくにも、急ぎの用事があった、との返信だった。


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