斎宮物語

「ほれ。」

何処にあったのか、突き付けられたのは、百姓の着るような質素な着物。

これなら、お末の着物の方がずっとましだ。

「さぁさぁ、お着替えなさい。」

私は動かない。

「では、せっかくですから私たちがお手伝い致しましょうなぁ。」

「……結構にございます。」

「まぁ、断りますのか?
町娘なんぞが、公家の姫に対して…。」

「…っ!
お喜世の方様は、私と大差ないのでは。」

「それもそうやなぁ。」

「されど、お喜世さんはそなたのように汚い心はされてませんえ。」

汚い心ね…。

どっちがかしら。

「さぁ、お着替えなさい!」


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