斎宮物語

家宣公の悲しみは深く、もうお食事もまともに取られておりません。

何に対してもやる気を無くされ、まるで廃人にございます。

このままではいかぬと、表の老中の方々も焦っておられました。

そんな家宣公をお救いしたのは、お喜世の方でございました。

お喜世の方は、家宣公と斎宮様が初めてお会いしたあの時と同じ姿で、家宣公を大奥にお呼び申し上げられました。

家宣公はお喜世の方を抱きしめ、いつき、と何度も呟かれ、その眼には涙を流しておられたそうな。

そしてお喜世の方は、

「いつまでも悲しんでおられたら、きっと斎宮様は安心してあの世には行けませぬ。
上様は、この世に並び無き天下の将軍さまにございます。
さぁ、前を向いて進まれませ。」

と、家宣公を励まされました。


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