ブラッディ アリス


「そちらの方は…もしや…」

カイルを見るなり、ベルアベスタ侯爵の腰が低くなる。

「お初にお目にかかります、ベルアベスタ侯爵。アリエス国王家第四王子カイルと申します…」

カイルは笑顔で挨拶をする。

「やはり…カイル王子殿下でしたか…。この度はご結婚おめでとうございます」

「ありがとうございます」

そんなカイルの愛想笑いに、アリスは密かな笑みを浮かべていた。

「どうぞお掛けください。今お茶をお持ちしますから」

ベルアベスタ侯爵はそう言って、メイドに何かを伝えに行った。

「さすが…それなりの屋敷だね」

「どういう意味よ」

椅子に座るなり、アリスとカイルは小声で会話をし始めた。

「明日は妻が処刑されると言うのに…ホント貴族って面白いよ」

カイルはアリスの顔を覗きこんでニヤリと笑う。

「…王族に言われたくないわ」

アリスは目を反らして自分に向かってくるベルアベスタ侯爵を見た。

「まさか王族の方がいらっしゃるなんて……アリスと王子はどういった関係だね?」

ベルアベスタ侯爵は少し焦ったようにアリスに尋ねた。

「数年前から王子とは…お互い良き理解者としてお付き合いさせていただいてますわ」

アリスはチラッとカイルを見た後、にっこりと答えた。




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