ブラッディ アリス




「何か手伝おうか?」


すかさずザリチェに声をかけたのは、カイル扮するカルマだった。


「…ありがとう…。でも、いいの。料理を作るのは、『独りで』がいいの」

ザリチェはカイルの顔をチラッと見ただけで、その後はずっとグツグツと音を立てる鍋の中を見つめていた。

「…そう…。人見知りする方?」

カイルはその場から離れようとはせず、慣れたような口ぶりでザリチェに質問を始めた。

「…する…かな…。やっとノーカやクレスタといるのも慣れてきたとこ…」

ザリチェは時折、鍋の中に調味料をふりかけながら答える。

「クレスタ…って、この家の住人なの?」

カイルはザリチェの動きを細かく観察しながら、何食わぬ顔で椅子に腰掛ける…。

「そう…。今は訓練に行ってるわ…。私の兄の、タウティと一緒に」

「……訓練……?」


「…そのうち…わかるわ…。あなたにも」


カイルから受ける真っ直ぐな視線を気にもせず、ザリチェは鍋の中のスープをすくい、静かにすすって味見をした。



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