ブラッディ アリス


数秒で室内の構造を頭に入れたアリスは、動かずにただ笑うだけのジャックを見つめた。


「…可笑しいんじゃない……嬉しいんですよ……」

ジャックは自分の前髪を右手でグシャッと軽く握った後、ゆっくりと顔を上げた。


「あなたが私のモノになる。こんなに光栄なことはありません」


薄暗いオレンジ色の灯りの中に、ポツンと浮かび上がる赤い瞳…。

アリスはゆっくりと後ずさりをする…。


「…じゃあ、私の体を捧げる代わりに…カナリィには何もしないと約束して」

「……なぜ……?…あなたにとって、それほど重要な存在ではないでしょう?」

「……あなたにとっても重要ではないでしょう?…だったら無駄に貴族界を荒らさないで。…迷惑だわ」


そう言いながら足を止めたアリスは、バッと服を脱ぎ始める。


「…いいでしょう。…ただし、私の欲望はあなたの体だけじゃ満たされない…」

ジャックはアリスに答えながら、一歩ずつ近づいていく…。


「…あなたには、私の子どもを生んでいただきます。…アリス・アベル公爵…」



< 342 / 657 >

この作品をシェア

pagetop