君が君を好きになって。

透明少年

中庭の噴水が散らす飛沫。
あつい陽射しに反射して、
キラキラ光っていたんだ。

そんな窓に囲われた風景を、ぼんやりと見つめていた。

「ひゃ」

右頬に冷たいモノ。
咄嗟に身を引く。

「菜束ー、ジュースこれで良かった?」

「あ、うん、ありがとう」

寄りかかっていた窓枠の隣、友達がしゃがみこむ。

「暑いねー…こっから部活とか信じらんない」

「陸上は暑いよね。…私部活行かなきゃ。じゃあジュースありがとう」

「クーラーの下で良い絵描きなよー」

小玲菜束
現在15歳、中学三年生。
青春、なんて実際は実感無きもので、私立中学ともなれば尚更。某有名アイドル事務所オタクか、アニメオタクかの二つに分かれ、下敷でスカートの中を扇ぐ女子達は、なんというかあまり男子には興味無い。
きっと多分。

「実際のとこ良く判らないんだけどね」

菜束は特に廊下を走ろうともせず、美術室に辿りついた。
菜束は美術部に所属して、その慣れた環境が気に入っていた。
いつでも教室の中はオレンジ色の空気で、和気あいあいと好きな絵を描く。
幸せだった。

「遅れました」

涼しい顔で美術室に入ったが、三年生が菜束に笑いかけて、後輩が立ち上がってお辞儀をしたくらいだった。いつも通り。
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