奈落の王女に仕えしは執事
Ⅷ予感
-レインside-













今姫が倒れた。
私は後ろから来ていたバルツの姿にも気づかないなんて…

「…すまねえな、お偉いさんの命令なんでね」

「…バルツ……!!」

憎しみの気持ちが湧き上がる。
姫はバルツに捕まり、首筋にナイフを当てられていた。

「…離せ」

「悪いわりぃ、でもよ…あんたが素直に死んでくれんなら、良いかもよ」

「……そしたら姫を離すか」

聞いたら、頷いた。
-私は、姫が助かるなら命は惜しまない
束の間の幸せは、一瞬で消えるものなのですね、姫。

私が姫に渡したネックレスが、きらりと光った。

「…じゃあ嬢ちゃんは、外で寝かせるぞ?」

「手出しは、させない…」

ポケットから取り出したナイフを、バルツの首に当てた。
ちゃんと外に寝かせたのを最後に、私は部屋に入る。

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