ひと夏の恋~満月の夜から始まった28日間の奇蹟~

山科side

~~~山科side~~~


『切』のボタンを押した後、
どっと汗が噴いた。


最近自分本位に過ごしていたから、
いざ女性を誘う段階になって

車が軽トラだってことに気付いて、
動揺してしまった。


今更どうカッコつけたいって訳ではない。

ただ、現場の人間に見られたり、
なんてことがチラっと頭をかすめて、

少し面倒になっただけ。



でも、そこで躊躇して、迷ってるほうが
よっぽど格好悪かったなんて気付いてなかった俺。


彼女に自宅までの道順を説明させた挙句、
二度も「車出しましょうか?」って
言わせてることにまで頭が回ってるはずもなく・・・。



重い腰をもちあげるかのように、
ふぅ~~っと大きい息を吐いたあと、

シャワーの替わりにオーデコロンを
身に纏い、待ち合わせ場所に向かった。




そこには・・・

いつもとは服装も雰囲気も違う彼女がいて、
俺に向かって手を振ってくれた。









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