オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




『ありす』――。


崩落した洞窟の中で、あたしはアプレクターじいちゃんに守られながら、ナギを抱いてその子と睨み合ってた。


顔は見えないけど、判る。

無邪気でいながら、限りなく害意のある気配。

さながら幼子が、好奇心から蝶の羽を毟るように。

そこにいるのは、邪気はないけれど。

ただの悪戯―それもかなり悪質な―を楽しむ幼い少女。

敵意すらもなく、ただただ思うままに行動する。

結果なんか考えずに、思う存分したいようにする。


《ありす……じゃと?確かに先日感じた気配とこやつの気配は同じじゃが……何かが違うぞ、杏子殿。
今のこやつは悪意がない。まるで子どものようじゃ。
あの時は明らかに貴殿に悪意を持って近づいておった。
凪殿と話しておった時、そして貴殿が凪殿と接吻した時。その悪意と害意は凄まじいものじゃった。
わしは貴殿に気付かれぬように護るのに苦労したが、こうなっては致し方ない。
あの邪なる存在を滅するのに協力するぞよ》


アプレクターじいちゃんは岩を頬張りながら、急いでそう言った。


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