オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】
6
『ありす』――。
崩落した洞窟の中で、あたしはアプレクターじいちゃんに守られながら、ナギを抱いてその子と睨み合ってた。
顔は見えないけど、判る。
無邪気でいながら、限りなく害意のある気配。
さながら幼子が、好奇心から蝶の羽を毟るように。
そこにいるのは、邪気はないけれど。
ただの悪戯―それもかなり悪質な―を楽しむ幼い少女。
敵意すらもなく、ただただ思うままに行動する。
結果なんか考えずに、思う存分したいようにする。
《ありす……じゃと?確かに先日感じた気配とこやつの気配は同じじゃが……何かが違うぞ、杏子殿。
今のこやつは悪意がない。まるで子どものようじゃ。
あの時は明らかに貴殿に悪意を持って近づいておった。
凪殿と話しておった時、そして貴殿が凪殿と接吻した時。その悪意と害意は凄まじいものじゃった。
わしは貴殿に気付かれぬように護るのに苦労したが、こうなっては致し方ない。
あの邪なる存在を滅するのに協力するぞよ》
アプレクターじいちゃんは岩を頬張りながら、急いでそう言った。