オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




コトコトと煮える音がする。


立ち昇るあったかい湯気。


卵を溶き入れたからか、甘さを含んだ中に硫黄みたいな独特の香りがした。


あたしは椅子に座ってぼ~~っとしながら、台所の竈のそばでお粥が炊けるのを待ってた。

今のあたしは、誰かと喋ったり接したりしたい気分じゃなかった。


自分の中にある色んな感情や気分が混ざり合い膨らみすぎて、膨張しきった風船みたいにいつ破裂するか判らないから。


膨らんだそれを割るのは、他の人が発したさり気ない一言かもしれない。

それも怖いけれど、今のあたしはそれだけじゃない。


思い遣りや気遣いはありがたいし嬉しいけど、今のあたしには煩わしいだけ。


何もかもがどうでもよくて、自分が人間であるという現実さえ脱ぎ捨てたいと思う。


その原因は、紛れもなく2日前にあった出来事から。


あれ以来あたしは何を信じれば良いのかすら解らなくなってた。

洞窟の中であった出来事は、確かにショックだった。

でも、あたしがこうなる迄の衝撃を受けたのは、その後だった。


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