汚れた街の汚れなき天使



ヘビロテ中の虎柄ジャージに着替えて戻るとまりあが必死に話していた。



愛美さんの彼は泣いてたから。



好きだったら一緒にいなきゃダメだから。



だから、連れて行ったんだと一生懸命語るまりあに眞子の口も開いてしまっている。……がすぐに我に返りまりあを抱きしめた。



「辛かったでしょ?会いたくなかったんじゃないの?酷い事された相手なのに」



「まりあは大丈夫。海人がいるから大丈夫だよ」



「そうよね♪ごめんごめん」



こっそり涙を拭いて眞子はもう一度まりあを抱きしめた。



「よしっ!!じゃあ明日はこのパン持ってお見舞い行こうね」



海人の顔だという大きなパンをもってまりあはうん、と嬉しそうに笑った。





「じゃ、明日は眞子に頼むわ。俺会議入ってるから」



「会議って……あの?」



「まぁな。海人がどうなるか、出来る限り掛け合ってくるわ」



明日は来期、つまり4月からの人事を決める会議。あいつが目覚めなければ、必然的に他の誰かを海人の代わりに入れることになる。





ま、俺だってまだそんな偉い訳じゃねーし……役には立たないかもしれないけど。




手元にあるのは来期の営業計画。



俺は波多野海人とタッグを組んでチーム営業をする旨の案を出すつもりだ。






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