汚れた街の汚れなき天使



「勝手な真似はよしてもらえませんかぁ。波多野さんとやら」



「こいつはうちの稼ぎ頭です。恋愛感情なんて必要ないっ!!!」



急に荒げられた声に思わずびくつく。


ただ者じゃない空気。


こんな父親だから……まりあは何も言えず働いてきたのか??





かと思えば。



「まりあ、こっちに来なさい」



「はい」



まりあを傍へ寄せ愛しそうに頭を撫でる。




「お前は俺の為に働いてくれるんだよなぁ?彼氏なんていらないよなぁ??」




俯いたまま何も言えなくなるキミに……何が真実なのか、正しいのか、俺にも分からなくなる。



「そうやって……まりあさんを縛り付けて楽しいですか?」



「何言ってやがる。全部こいつが望んでるんだ。」



「大体、彼女はまだ未成年です!!」



思わず叫んだ俺の言葉に、まりあの瞳が大きく見開かれた。



「海人……なんでそれ知って……」



「そこまで知ってるのか。しかもこいつから聞いたんじゃないらしい……一体何なんだ?お前さんは??」



ゆらり、肩を揺らしながら俺の前に立つ父親の目は、負けてしまいそうなぐらい血走っていた。



< 61 / 215 >

この作品をシェア

pagetop