{霧の中の恋人}

疑惑


あれから数日が経った。


大ちゃんとは何回かデートを重ね、大学でも空いた時間があればちょくちょく顔を合わせていた。


将来、教師を目指す大ちゃんは色々と忙しいみたいだけど、空いた時間を見つけて私を構ってくれている。

毎日メールもくれるし、時間があれば電話もくれる。


クリスマスイブも2人で外に出かけた。


ちょっと遠出して、素敵なレストランで食事をとり、夜景を見に行って、プレゼント交換もした。


クリスマスプレゼントに貰った、ピンク色のハートの石がついた指輪は毎日身につけている。


ハァ~、なんか幸せを実感するなー。


お母さん…

大ちゃんが恋人になって、友達もいて、充実した生活を送っているよ。


出来れば、お母さんにも直接報告したかったな…。



きっとお母さんが生きていたら、自分のことのように喜んでくれたに違いない。



クリスマスイブの日、照れながら指輪をくれた大ちゃんの顔が忘れらない。



”今は安物だけどよ、そのうち本物を贈るから、これは将来の予約ってことで…”



顔を真っ赤にしながら、私の左手の薬指に、この指輪をはめてくれた。

自分で言っておきながら、”俺のキャラじゃねー”なんて言って、手で顔を隠してたっけ。


フフフ…




「ニヤニヤ気持ちが悪い」


幸せの余韻に浸っている私の後ろで、それをぶち壊すような久木さんの声が聞こえた。





< 247 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop