KISS OF LIFE
「何か、困ることでもあるの?」

いや、ある訳じゃない。

「散らかってる、かもよ?」

「構わない」

「ちっちゃいよ?

ワンルームだよ?」

「別にいいよ」

はい、決定。


駅から出て、歩いて5分ちょっとでチョコレート色の壁が見えてきた。

「あれ、あたしのマンション」

あたしは壁を指差して答えた。

ぶっちゃけ、男を自分ン家にあげるのは初めてだ。

つきあった男はいるけど、みんな相手の自宅だった。

「彩花は何階に住んでるの?」

「5階」

「ふーん」

マンションの玄関が見えた時、1人の男がそこにいることに気づいた。

いや、正確には男の子だ。

って言うか、あいつ…。

男の子もあたしに気づいたらしく、
「おうよ」
と、片手をあげた。
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