おろし
そして今夜、そのどぶおちろの皺くちゃの白い手、何百本とも言える数の手が、溝板の穴からヌ〜っと出ている・・・・
それは、まるで、海中のイソギンチャクのように、フワフワと・・・
その手で、獲物を探している。近寄る人間の、アルコール臭を求めて・・・
そして、恰好の獲物を見つけると・・・
いっせいに、足に掴みかかっていき、そして溝に引きずりこむのだろう・・・
そう、まるで河童のように、しかし、河童ではない・・・
それとは違う化け物。
そのような物が、このイズミヤ付近に出没している・・・のだ。

---深夜、いっせいに、溝穴から首だけを出している化け物を想像してほしい・・・
それは、おろしと言えよう・・・
しかし、その想像が、彼女の好奇心という蝋燭に、火をともすことになろうとは・・・
高足 痢煙の好奇心は尋常ではない・・・

やはり、痢煙は、恐怖手紙に書いてあったとおり、予言どおりに、どぶおちろに興味を抱き、このイズミヤ付近を散策し、恐怖レポートたるものを記述しはじめた・・・
それが、どんな結果を生んだのかは、今回の恐怖手紙(特別深夜刊)に書かれている(はず)通りだ・・・
< 19 / 26 >

この作品をシェア

pagetop