恋愛ゲーム
まるで大切なモノに触るかのように、
優しくあたしの頬に触れる、先輩の大きな手。
その手が頬を優しく包んで、愛おしむかのような先輩の視線が、あたしに突き刺さる。
…分かってる。
先輩は、ゲームに勝ちたいだけ。
先輩は、ただ、あたしを落としたいだけ。
…分かってる。
こんなの、あたしの片想いだってこと。
先輩は、あたしのことなんて何とも思ってないってこと。
…分かってる。
――分かってる…
だけど。
もう、それでも良い。
もう、どうでも良い。
先輩のことを思うと、止まらないの。
近付きたいと、触れたいと――…
ダメなのは分かってても、そう、思ってしまうから。
あたしは――…
「…慎吾…」
あたしはゆっくりと顔を上げて、
先輩の唇に…
触れるだけの、キスをした。
温かい熱が、唇の先を掠める。
…もう、ゲームでも何でもいい。
あたしは…
先輩が仕掛けた、この甘い罠に…はまってしまった。