恋人は専属執事様Ⅱ
先ずは仲直りをしなくっちゃ!
私は最近穴場だと気付いたテラスへお散歩に行く。
案の定誰もいないから、2人で話すにはピッタリ。
それまで黙っていた宝井さんが口を開いた。
「ここでいいの?俺に襲われても王子様の助けは来ないよ」
その言葉に私はつい笑ってしまう。
「何笑ってんの?」
無表情のままそう言った宝井さんに
「だって王子様って宝井さんの方がピッタリだと思って…それにやっと宝井さんがいつものエロ王子発言をしたから安心しました」
と私が言うと、宝井さんは怒った顔で
「何それ…」
と言って黙ってしまった。
折角いつもの宝井さんになったと思ったのに、私が余計なことを言って怒らせちゃった?
どうやって会話を続けるか悩んでいると
「淑乃を俺のものにするには先ずは専属契約を結んで近くにいる状態にしようと思ったのに…淑乃は今日の俺じゃ不満な訳?完璧だっただろ?何が不満なんだよ?」
と宝井さんに言われ、私は宝井さんがイメチェンした理由が私と専属契約を結ぶ為だと知って驚く。
美意識が高く、どうすれば自分が一番良く見えるかを知っている宝井さんが、わざわざそこまでするなんて…
でも……
「完璧ですよ…今日の宝井さんは。でも、私は毒づいたり偉そうに笑う宝井さんの方がいいです。今日の宝井さんは全然宝井さんらしくなくて落ち着かないです」
言っちゃった…
怒られると思いながら宝井さんの表情を盗み見ると、呆れた顔の宝井さんと目が合う。
「ハッ…俺らしくないとイヤってことは、淑乃は俺がエロ王子の方が良いってことだろ?淑乃は俺にそういうことをシて欲しいんだ?」
あれ?私、どこで間違えたの?
グイッと腕を引かれ、気付けばまたもや宝井さんの腕の中。
「ちょっ…宝井さん?」
でも宝井さんはただ私を抱き締めているだけで、私は抵抗せずに大人しく宝井さんの言葉を待った。
「俺らしくか…確かに完璧なだけじゃアイツと変わらないからな。淑乃の望み通り、俺らしくしてやるから感謝しろよ?」
宝井さんは腕を緩めて私と顔を合わせると、ニッといつもの口角を上げた笑顔を見せる。
うわぁ…悪い笑顔……
でも、アイツって?
「教室に戻るぞ。専属契約を交わすまではお預けだ」
宝井さんが私の腰に腕を回し歩き出す。
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