ダイスキ熱愛先生!~溺愛教師の不純!?な個人授業~
「よし、着いたぞ」

一時間も走らないうちに桐島の自宅に着いた。
これで、桐島は本当に帰ってしまう。


ありがとうございました、と言う桐島と一緒に車を降りた。

「治ったからって、ムリすんなよ?今日は1日安静にしてろよ?」

「…はい、本当にありがとうございました。これ、洗って返しますね?」

桐島が持っている荷物をクイっと上げた。うちから無理やり持って帰った着替えだ。

「ああ、頼む」

苦笑して答えると、桐島も笑顔になる。



「……じゃあな」

昨日からずっと一緒にいたせいで、いつも以上に別れが寂しい。

「はい、また明日」

そう言って桐島は右手を出した。
思わず瞬いて桐島の顔を見ると、でしょ?と笑っている。

そう。送り届けて別れる時に俺が毎回している握手。桐島から求めてくれるのは初めてだった。

差し出されたその手を、ギュッと、強く握った。





ゆっくり手を離し、…じゃあ、と桐島に見送られながら車に乗り込もうとした時、

「先生!」

と、大きな声で呼び止められた。


その声に、振り向く。
さんさんと降る太陽の光が逆光となり、桐島の顔は影に隠れている。

強い光に思わず目を細めた。



「…いってらっしゃい」

静寂に包まれた空気の中に、誰よりも愛しい声が響く。


「………いってきます」



その表情が見えないくらい、とても、眩しい朝だった。


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