嘘つき②【-臆病-】

部屋から出て行く彼は、もう一度もあたしを見向きもしない。


レンズ越しでも何にも興味なさそうな冷たい瞳。


中性的な顔立ちに薄く笑う仕草。


触れる指先は熱いのに


身体が離れてしまえば、この関係が決して深くならない事を痛感させられる。


「…愁ちゃんもその呼び方はやめて下さい」


あたしは小さく言葉を落とす。


彼があたしを抱く理由なんて、ただ『断れないから』ただそれだけね。義務みたいなもの。


感情なんて何もないの。


分かっているからこそ


その冷たい態度が


益々あたしに求めさす事を



あなたは知っているのかしら?



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