白いかけら

 それから数ヶ月、彼にあった。
 名前はラド。真っ黒で少し汚かった。それに不器用で、少し愛想がないかな。
 でも、優しくて、紳士。見た目から想像できないけど。
 最初見たとき、なにこれって思ったけど、私にマフラーをくれたときちょっとときめいちゃった。
 まさかこんな人がこんなことするなんて、思わないじゃない。
 だけど、彼と長くいることはできない。
 彼といると楽しかったよ。彼の事、嫌いじゃなかった。むしろ、その逆。それなのに。
 いや、だからこそ。彼に心配はかけられない。彼に惨めな姿なんて見せたくない。
 彼に、悲しい思いをしてほしくない。
 彼には、私じゃなくて、きっと、もっといい人がいる。
 だからね。お別れをしなきゃいけない。
 長く一緒にいすぎると、情がうっつっちゃうでしょ。それに、ここには二人しかいないから、ちょっとした感情でも湧いちゃったら勘違いしちゃうかもしれないし。
 私ですら、勘違いしてるんだもん。
 どんなに冷血って思われてもいい。冷たく引き離した方が彼のためかもしれない。
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