白いかけら

そして…

 ラドがいる生活はやっぱり楽しかった。輝いていた。
 だめだね。私って。みんなを不幸にしたのに、自分だけこんなに幸せになって。
 だけど、別れは早かった。
 翌日、なぜだか早く目が覚めたの。
 外を見ると、雪が降ってるの。空は晴れているのに。
 それは私が好きな天気で、うきうきした気持ちで外に出たの。
 ラドには悪いけど、朝から歌わせてもらったわ。
 少しして、ラドも起きてきたの。起こしちゃったのかな。
 なんてことを思ってたら、ふと思い出したの。
 私、目が見えないはずじゃなかったっけ?でも、見える。
「ラド?」
試しにしゃべってみると、ちゃんとした言葉で聞こえた。
 嬉しかった。また、ラドが見れる。ラドの歌が聴ける。ラドと話せる。
 だけど…。
 体が震えた。寒い。
 感覚も戻った。元に戻ったんだ。
 涙のぬくもりがじんわり伝わった。
 初めてあったときのように、ラドがマフラーを巻いてくれた。
 今度は、本当に暖かかった。
 嬉しくて、悲しくて、涙があふれてきた。
 彼が抱きしめてくれて、初めて彼のぬくもりを感じた。
 人のぬくもりを感じたのは、どれくらい前だっただろう。
 このまま時間が止まればいいと、叶わない願いをしてしまうほど、幸せだった。
 でも、こうしてる時間も終わってしまう。
 時間がない。
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