B L A S T

「それで真田さんのその恋は実りそう?」


ふと、あの言葉が蘇った。


――楓のこと、ちゃんと大事にしろよ。



「まだまだ振り向いてくれなさそうです」


と楓は答えると、江原先生が慰めるように肩を優しく叩いてくれた。


「恋は突っ走るものだよ。頑張りなさい」


そうはいっても、なかなかうまくいかないのが恋だったりもする。

楓は大の字になって寝転んだ。

太陽の光が眩しい。

心と裏腹に空は晴れやかだ。


「楓さん。ずいぶんここが気に入ったみたいだね」


とジュンも隣に並んで寝転がった。

病院のそばに少し斜面の庭がある。

車椅子のジュンの運動解消のために散歩がてら利用するところで、そこの木陰で休むことが日課になっていた。

こうして寝転んで目を閉じていると、心が少し落ち着く。

大好きな場所だ。


「ねえねえ、来週の日曜日にBLASTの集会があるらしいんだけど楓さんも行く?」


楓はジュンに目をやった。


「集会って?」

「僕も一回しか行ったことないからよく分かんないけど、BLASTとその傘下のチーム全員が集まって話し合いするみたいだよ」

「へえ。一体何人の人が集まるんだろうね」

「今回は"風神"と合併したから大規模な話し合いになると思うよ。多分五千人は下らないんじゃないかな」


五千人と聞いて愕然とした。

イツキはその五千人の上に立つ人なのだと思うと、なんだか彼が遠い存在に感じた。


「あたしは遠慮しておくよ」


と楓は首を振った。


「どうして?」

「だってあたしはBLASTのメンバーじゃないし…」


そこまで言ってはっとする。

そういえばあたしって彼らにとってどういう存在なのだろう。

BLASTのメンバーでもなければ、ジュンやテツみたいに彼らに憧れているわけでもない。

ただガヤの幼なじみだからと巻き添えにされただけで、彼らが打ち解けた今、あたしがBLASTのそばにいる必要はもうなくなったのだ。

それでも彼らのそばにいる理由は――。
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