B L A S T

一瞬、聞き間違いかと思った。

あまりにも唐突で、楓は言葉が出ない。

なんで。


「…ご、ごめんなさい。今度からは一人で来ないようにするから、だから」

「違う。そうじゃないんだ」


イツキは首を左右に振った。


「そうじゃない…」


じゃあなんで。

じゃあなんでそんな事言うの。


「迷惑なんだ」


冷たくて、低い声。

目の前が真っ暗になったような気がした。

蝉の鳴き声がいやに響く。


「俺の言ってること分かるな」


あたしは何を自惚れていたんだろう。


――私はイツキのためを思ってやっただけなのに!


もしかしたら、あたしはイツキに嫌われているのかもしれないのに。

彼女のあの言葉の意味を考えれば考えるほど、その結論に辿り着く。


「楓…」


あたしが俯いていると、イツキは心配そうに顔を覗き込んでくる。

黒々とした瞳は変わらず優しくてあたしの胸はズキン、と痛んだ。

こんな時まで優しくしないでほしい。

あたしのことが迷惑なら放っておけばいいのに。

あたしは黙ってプレハブを出ようとしたけれど、ふと胸元で揺れるそれに気付いた。

イツキにもらった星屑のネックレス。

このネックレスをもらった時、あたしもBLASTの一員になれたみたいですごく嬉しかったのを覚えている。

あたしはそれを取り外し、イツキにそっと渡した。


「これ、…返すね」


ネックレスが彼の手に渡り、かすかに指先が触れる。

優しい、温もり。

彼は言った。


「ごめんな。楓」
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