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「そういやあいつどうするんだろうな」


ガヤはそばにあった丸椅子に腰掛けて言った。「手術」


「お前も由希から聞いたんだろ」


楓は頷いた。

あの日、由希が家に来てくれたときに彼女が教えてくれた。

イツキの病気を治してくれる医者が見つかったこと。

もしかしたらその人に手術をしてもらえばイツキは助かるかもしれないということ。

だからあたしはそのことをイツキに伝えたくて急いであの工場に向かったのだ。


「でも一兄のことだから一度決心したことは揺らがない気がする。僕がいい医者紹介するって言っても聞く耳持ってくれなかったし…」

「だけど手術すりゃああいつは助かるってことだろ。受けなきゃ本当のバカだぜ。そりゃあ多少のリスクはあるけどよ。聞くところによりゃあ何時間もかかる大幅な手術になるらしい。それに今のイツキの体が耐え切れるかが問題なんだってよ」

「そうなんだ…」


楓は俯いた。
どっちにしても危険を伴うってことか。


「まああいつが決めることだ。おれたちは黙って見守っていようぜ」


うん、と楓とジュンが頷くと着信音がけたたましく鳴り響いた。

ポケットからケータイを取り出したガヤは画面を見たとたん、眉をしかめる。


「どうしたんだよ。何かあったか」


首筋を指差すガヤの仕草を見てどうやら相手はイツキらしいことが分かった。

やがて見る見るうちに表情が険しくなるガヤに、楓はジュンと見合わせた。

イツキは何を話しているのだろう。


「お前、本気で言ってるのか」


やがてそれまで黙って聞いていたガヤが重い口を開く。


「…分かった。明日の朝、そっちに向かう」

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