蒼翼記

温もり

少しの間しかいなかったのに、この家に戻ってくる事をどんなに心待ちにした事だろう。



王からこの森に住む許可を出すと宣告された昨日の夜。
リンはアナイトセタとクロスメイアスにライアの元へ戻る旨を伝えた。

「皆も、来ないか?」

そう問いかけた。



直ぐさまリンの元にひざまずいたのは石帝、クロスメイアス。

「我が命は主のもの也。
主が望めば我は何処へでもお供しよう」

一方、残る6匹の猿達は白い顔のナキをふくむ5匹が、中央に座る金のトサカをもつ猿、アキの決断を見守っていた。

アキはまるで人間のように、目を閉じ腕を組み、黙考を続ける。


やがて、ビー玉のような瞳を地に伏したまま、ため息のような声で呟いた。



「何処であろうと、生きてさえいれば、血は絶えない……そういう事だね」


その呟きには、この死と背中合わせの危険区域でさえも、長くここで生き延びてきたと言う事への名残惜しさが感じられた。


「アキ…」

「そうさ、生きる為ならなんだって…あたしら仲間だろう?」


にっ、とひどく人くさい笑みを浮かべ、アキは立ち上がる。


「違う場所で生きたって、同じ土俵にいるんだ。楽しくやろうじゃないか」

他の5匹が嬉しそうな声をあげる。
それに答えるようにアキは続ける。

「ついて行くともさ。リン。あんたの幸せはあたしらの力だ」
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