蒼翼記

探索

傷は塞がったものの、まだ翼が痺れて飛ぶ事が出来ない。


恐らく、『あいつら』が僕を追い掛けて来た時に用いたあの『試作品』の薬の効果が抜け切ってないんだろう。


「……」


無意識に拳を強く強くにぎりしめる。






ふと、後ろで何かの気配を感じた、ぶつぶつと呟く声も。


「…その翼、毒があるよ。毒がある。
…誰かに無理矢理いれられたと見えるよ。誰かにいれられたと見える…」


振り向いた先、ライアの住み処の前の巨大なフキの下にいるのは水掻きのある人の手を四肢に持つ蛙。

猿のような口でしきりに何か呟いている。



「おはようタール。毒が見えるの?」


近付いて尋ねると、僕の膝くらいまである体をてらてらさせてボールのような瞳をキロキロと動かし僕を見る。


「…リンと見えるよ。リンと見える。
…まだ飛べないと見えるよ。飛べないと見える…」

「タールは自分にとって危ない毒、わかる」



顔を上げるとそこには双頭の黒馬。

目や首筋を覆い隠す程長いたてがみが抜けたように白く、四肢の蹄の上には黒く太い爪を生やした鳥の脚がついている。



後ろではたてがみと同じ色をした尾が機嫌良さそうに揺れていた。
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