蒼翼記
リンは少し黙り、口を開く。

「友達が良いって言うのは、君の気がおさまりそうにないね」

「とどめをさす力を持ってしてそれをせぬ貴公は勝者であり命の恩人であり、やはり主と呼ぶに相応しい」


ふー、と息をつきながらリンは頭をかく。
城にだって自分を恐れる者は多かれどここまで敬われるのは生まれて初めての経験である。


「僕なんかで良いなら」


そう答えるとクロスメイアスは恭しく頭をリンの足元にあてた。

「クロスメイアスを服従させた…」
「「服従させた」」
「「リン強いリン強い」」
「たいしたもんさ…全くね」
後ろの6匹が騒ぎ立てた。





「スポゥケィの奴も見てやがる事だし、強い後ろ盾になりそうだ」



アキの言葉に彼の視線の先を追うと、頭と同じくらいの嘴(クチバシ)を持った小さな鳥が木に留まっており、翼の下から生える腕が羽の豊かな胸の下で骨張った五本の指を組んでこちらを見下ろしている。




リンはクロスメイアスの元にしゃがみ込んだ。



「えーと、クロって呼んで良い?」
「御心のままに」

「じゃあクロ。僕達はもう仲間だ。あいつらとも仲良くやってくれるね?」
「無論、主の希望とあらば」

「名前は…」
「アナイトセタの6匹猿」
「え、知ってるの?」
「あたしらの種族は血と一緒に名前の頭文字を受け継ぐ。あたしらの代は下にキがつくよ」
「それでアキ、ナキ、イキ、トキ、セキ、タキになるのか」
「いかにも、彼奴らの種族は古い為にこの地では知らぬ者の方が少ない」

「そういうあんただってなかなかに有名じゃないさクロスメイアス」
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