【短編】君を想う
男と女と男



智明の母親・美佳さんと談笑しながら、一足先に朝飯を食っていた。

一緒に来た千鶴は今、智明を起こしにいっている。




俺、和泉修平と長谷川千鶴・椎名智明は同い年の幼なじみだ。

ついでに家も、長谷川家を挟んで隣同士。


子供が生まれたのを機にこのマンションに移り住んだら、同い年の子供がいたから親同士はすっかり意気投合したらしい。


俺の親父、和泉慶は仕事人間で毎晩遅い。

出張も多く、帰って来ないことも珍しくない。

ま、俺は男だし、色々自由にできるから、別に寂しいとか思ったこともないけど。



母親は小学生の時に他界した。

元々体の弱い人だったらしい。

写真の中の母親は、息子の俺が言うのもなんだけど、儚げな美人タイプだった。




ふと、廊下とダイニングを繋ぐドアが開いて、ため息をこぼしながら千鶴が入って来た。


「千鶴。智明、起きた?」

卵焼きをつまもうと伸ばした手を止めて千鶴を見る。

「やっとね……」


そう言って千鶴は俺の左隣に座った。

朝の食卓の指定席だ。




──ちなみにここは椎名家。






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