【短編】君を想う
「……飯食えるかも、と思って入ったんですけど……」

なぜか言い訳がましくなってしまう。


こんなところで遭遇して、しかも急に2人になって、何を話していいのか困ってしまう。


「一応おつまみみたいなのもあるけど……良かったら一緒にどう? 外で」

「え、でも……」


いきなりの誘いに困惑してしまった。


「お店だったら大丈夫。今日はあまりお客さんいないみたいだし」

「…………」


何て返事をしていいものやら困っていたら、注文を受けた柏木さんが戻って来た。


「叔父さん。今日はもう上がっていいかな?」

「いいよ。今日はきっと暇だろうし」

「ありがとう」


俺が口を挟む間もなく、決まってしまった。



コーヒーを飲み干して、俺たちは店を出た。


当然代金を支払おうとしたら、

「来店記念だ」

と言って受け取ってもらえなかった。


でも、そんなもの受け入れられるわけもなくて食い下がろうとしたら、

「……また来ればいいんじゃない?」

と彼女は肩をすくめた。



< 31 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop