【短編】君を想う
「別に責めるつもりなんてないんですよ。好きになったのがたまたま生徒だったってだけでしょ」


俺は言葉を続けた。


「ただ、叶わない恋は辛いだろうな、と思って」

「……っ」


それを聞いた瞬間、彼女は顔を覆って泣き出した。



“叶わない恋”に自分を重ねてたのかもしれない。


“雷が苦手な彼女”に千鶴を重ねてたのかもしれない。



手を伸ばして、頭をそっと撫でると、彼女は小さく息を吐いた。



「いけないことだってわかってたの。でも、好きになってしまった……」

「うん」

「隠し通す自信もないのに、始めてしまった私がいけないの」

「うん」


彼女が言葉を吐き出すたび、俺は頭を撫でた。


「学校にバレる前に……って手を離したのは私の方。彼を守るつもりだったけど、本当は自分を守りたかっただけなのかも」

「うん」

「手を離して、やっぱり彼が必要だって思った」



「……もう、いいんじゃない?」

「え?」

彼女の手を取り払って、涙をそっと拭う。


化粧をしていない泣き顔の彼女は、千鶴よりも幼く見えた。



「もう先生じゃないし、彼だって生徒じゃない。……今も待ってるか、俺にはもちろんわからないけど、でも、思いは伝えないと」

「和泉……くん?」



やっぱり俺は、彼女たちの関係と自分を重ねているみたいだ。



「伝えてダメだったら、またヤケ酒につき合ってあげるから」

「……バカ」


意地悪く言うと、彼女は照れたように笑った。


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