粉雪2-sleeping beauty-
「…真鍋のヤツ、この前籍入れたんだと。」


DVDのエンドロールを観ながら、少し迷ったが、それだけ言った。



『…式は?』


「…金ないんだってさ。」


『…そっか。
勿体無いね…。』


ポツリと言う千里に、顔を向けることが出来なかった。


抱いているクッションの端を握り締め、それ以上は言葉を発しない。


だから俺も、それ以上は何も言えなかった。



真っ暗になったDVDの画面の所為で、余計に物悲しい沈黙に包まれる。


その空気を打ち消すように、チャンネルを替えた。


たまたまつけたチャンネルからは、馬鹿みたいな笑い声が流れ、

より一層、俺達を虚しくさせた。



「…泊まってくか?」


『…うん。』


その言葉に少しだけ安心し、煙草を咥えて火をつけた。


千里は立ち上がり、キッチンに向かう。


少しすると、洗い物のカチャカチャという音が聞こえてきた。


重たい空気が少しだけ解きほぐされ、安堵のため息をついた。



お前はまるでシーソーみたいに、上がったり落ちたり、

浮いたり沈んだりを繰り返していた。


俺が居たから、そんなカンジだったんだろう。


一人だけのシーソーは、シーソーと呼べず、落ちて沈んだままだった。


そうさせたのは、紛れもなく俺なんだ。



少しずつ、少しずつ…


“その時”に近づいていく―――…



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