粉雪2-sleeping beauty-
「…お前…知ってたのか…?」


驚いて振り返った。



『…何だよ、マツ…。
知らなかったのか?』


「呼び捨てしてんじゃねぇよ!」


睨んだ俺に、嵐は大きなため息をついた。



『…そんなこと、言ってる立場かよ…。』


「―――ッ!」


『…よろしいですか?』


制止するように咳払いをした医者に、唇を噛み締めて向き直った。



『…私も精神科ではありませんから、専門外なんですがね?』


一度前置きをした後、医者は言葉を続けた。


『…こういったものは、原因を取り除かない限り、繰り返すものです。
まぁ、風邪みたいなものですし、死ぬような病気でもありませんが。』


「―――ッ!」



…“死ぬ”とか“生きる”とか…


何で簡単に言えるんだろう…。



『先生!
酒井さん、意識を取り戻しました。』


「―――ッ!」


『…そうですか。』


入ってきた看護婦も事務的に言い、医者もまた、事務的に返した。


まるで流れ作業でも見ているように、千里が意識を取り戻したことを告げられた。



『…あれ?
アイツ、“小林”とかじゃなかったっけ?』


キョトンとした嵐は、首をかしげた。



「…それは、死んだ男の名字だよ。」


それだけ言って、部屋を出た。


“意味不明だな”と呟きながら、嵐も再び俺の後に続く。




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