粉雪2-sleeping beauty-
車を30分ほど走らせる途中、コンビニに寄った。


お菓子まで買おうとする千里を制止し、ホットの飲み物だけ買って足早に出る。



『…この道真っ直ぐ行ったら、ラブホ街じゃない?
ホテル行くの?』


車の中で、千里はキョトンと聞いてきた。


口元を引き攣らせ、千里に向き直る。



「ハァ?つーかお前、俺を何だと思ってんの?」


『…違うんだ?
じゃあ、どこだろう?』


行き先を考えながら首をかしげる千里に、大きなため息をついた。



「…もしヤるとしても、何であんな汚ぇ場所でしなきゃいけねぇんだよ。」


睨む俺に、千里は口を尖らせた。



「…ラブホってのは、どーでも良い女とする場所なんだよ。
だから俺、家には女連れ込んだことねぇだろ?」


『…ラブホには連れ込んでたんだね。』


「―――ッ!」


今度は逆に睨まれ、俺は何も言えなくなった。


そんな俺を白い目で見ながら、千里は言葉を続けた。



『…あたしが居なきゃ、家に連れ込んでた?』


「…お前が居ない生活なんて、考えたこともねぇよ。
あんなの全部、お前の代わりだから。」


『―――ッ!』


目を伏せる千里の頬に触れ、唇を落とした。


だけど寸前で止め、言葉を掛ける。



「…汚ぇと思う…?」


『…思ってないよ…。
マツを苦しめてきたのは、あたしだから。』


「―――ッ!」


そして、唇を合わせてくれたのは千里の方だった。


何でこんなに優しいんだろう…。


何でこんなに、自分を責めるんだろう…。


俺の頬に触れた千里の細い指は、相変わらず冷たかった。


< 351 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop