粉雪2-sleeping beauty-
「…千里…?」


ゆっくりと力を抜き、声を掛ける。



「…ホントに、死んだのか…?」


綺麗すぎて、まるで眠っているようだ。


手が震えて、涙が溢れてくる。



愛しくて、愛しくて、愛しくて…


こんな方法しか思いつかなくて、本当にごめん。


だけど、これが俺の愛し方なんだ。



零れ落ちる涙は、千里の頬に伝う。


まだ温かい唇にキスを落とし、声を上げた。


悔しくて、悲しくて…


これから、お前の居ない世界で生きていかなきゃいけないんだな…。


お前のことだけ考えて…。


嬉しいはずなのに。


自分から望んだことなのに…。



蘇ってくる思い出は鮮明で、そのどれもがただ輝いていた。



「…愛してたんだよ、ずっと前から…。」



初めて会った時、“綺麗だ”と思った。


今もずっと、変わらない。


多分俺は、あの頃からお前を愛してたんだ。


愛しすぎて、苦しかった。


だからお前のこと、たくさん傷つけた。


なのに最期に、“ありがとう”と言ってくれた。


お礼を言うのは、俺の方だよ。


俺を独りにしないでくれて、ありがとう…。


でも、もぉ十分だよ…。


もぉ十分、俺は幸せだと感じることが出来たから。



< 369 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop