粉雪2-sleeping beauty-
―――迎える朝も、訪れる夜も、お前はもぉどこにも居なかった。


あの後、無事に真鍋の子供が生まれたんだって。


元気な女の子って言ってたよ。


お前が死んだ数時間後だったそうだ。



真鍋もルミも、結局俺を許さなかった。


だけど嵐だけは、わかろうとしてくれたんだ。


でもさ、誰にもわかってもらおうなんて、思ってねぇよ…。


お前と俺だけが、わかってれば良いことだから。



部屋の隅で見つけたメモ書きには、千里の字でメッセージが書かれていた。



“マツ、今日は本当に楽しかったよ。
この街に来て、今日が一番楽しかった”


たったそれだけの、短いメッセージ。


手紙なんて、残さないって言ってたのに…。


お前やっぱ、卑怯だよ…。



俺の口座には、千里の名前で全ての金が振り込まれていた。


お前が死ぬ3日も前。


お前は、こうなることをわかってたのか?



“あたしの全部、あげるよ?”


本当は、こーゆー意味だったのか…?


お前、ホント馬鹿だろ…。



結局また、マスコミに騒がれた。


どーせロクなこと書いてねぇから、俺は読んでねぇんだ。


昔の事件まで掘り返されちゃって、ごめんな…。




なぁ、千里…


あの人が“粉雪”だとするなら、お前は“雪の華”だと思うんだ…。


俺がこんなこと言ったら、可笑しいか?


お前は今、幸せか…?


本当は、俺の手でお前を幸せにしてやりたかったんだ…。


だけど、俺じゃダメなこともわかってた…。


だから、これで良かったんだよ。

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