粉雪2-sleeping beauty-
―ガチャ…

「―――ッ!」


リビングのソファーで相変わらず煙草を吹かしていると、

千里がゆっくりと扉を開けた。



『…ありが…とう…。』


少しだけ顔を赤らめた千里が、小さく呟く。



「…あぁ。」



何となく、この状況は気まずい。



「…てゆーかお前、頭くらいちゃんと乾かせよ…。」


近づくと、俺と同じシャンプーの香りがほのかに香る。



『わかってるよ。
てゆーか、煙草の臭いつくじゃん…。』


言いながら、首に掛けたタオルで、頭を拭いた。


口を尖らせ、化粧を落として少し小さくなった目で、上目遣いで見上げてきた。


その顔から逃げるように目を逸らし、煙草を灰皿に押し当てた。



『…ねぇ、マツ…。
歯ブラシ忘れちゃったの。
新しいの出して~!』


言いながら、勝手に脱衣所に行って、棚の上を探し始めた。



「…置いとけば良いから。」


『…え?』


瞬間、千里の手が止まり、戸惑う顔をこちらに向けられた。



「…好きな時来れば良いから。
居たいなら、好きなだけココに居ろよ。」


『…でも―――』


「頼れよ、俺のこと。」


俺の言葉に、千里は目を見開いた。

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