恋愛ごっこ
結構長い時間歩いて、そろそろ終わると思ってた。

もう脅かしてくる生徒もいなくて、人形とかのセットとか音だけ。

―――ゴロ………

いやな予感は的中した。

最後の最後になって雷の音。

「っ……」

「天凪?」

いつもみたいに心配して顔を覗き込む紘翔。

「平気よ」

顔をあげて、振るえる声を必死に抑えて笑う。

今日はお守りもちゃんと持ってる。

だから平気……。

あともう少しだけ我慢すればいいんだから。

繋いであった紘翔の手が離れて、紘翔に抱きしめられた。

「じっとしてろ」

耳元で聞こえたのは本来の紘翔の声。

その声が聞こえた後、あたしは紘翔に抱き上げられた。

紘翔に包まれてるから光も見えないし、音も聞こえない。

でも紘翔が外に出たってことはわかった。

少し顔を上げてみるけど、紘翔が私を下ろしてくれる気配がない。

………何なの?

「天凪さまっ!?」

「どうかされたんですか!!?」
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