妖魔03(R)〜星霜〜
治療や物の施しがあるからといって、信用してはいけない。

気まぐれの可能性も捨てきれない。

元より、騙される事は日常茶飯事の世界。

そんな世界で、どう信じろというのだ。

私は、心に芽生えた何かを押さえつけた。

だが、貰っておくに越した事はない。

少し大きめの黒いスーツを着て、地に立つ。

「ゴムをつけるくらい基本な姿アルな」

「助かる」

動きにくいわけではないが、まだ慣れていない。

直に慣れるだろう。

「幼女は、隣の部屋にいるアルよ」

「解った」

「言っておくが、今のお前では守れないアルよ」

解っていた。

私に力はない。

無頼漢に立ち向かうほどの腕力もなければ、逃げ足が速いわけでもない。

彼女が帰らない限りは放っておくようにしたが、マヤにとっては危険でしかないのではないのか?

もし、マヤの事を嗅ぎつけた人間が私を殺し、マヤを奪い取るとどう扱うかなど解り切っている。

私の安らぎを優先するのか、マヤの安寧を優先するのか。

マヤはオルゴールを取りに、私の住処に迷い込んだだけだ。

親の持国の元に返す事が正しいのか。

「突っ込む事に期待しすぎるくらい、幼女に何かを求めるのは馬鹿げた事アル」

私は、広目の言っている事を理解してしまっている。

マヤは少し寄り道をしただけ。

親元に帰すべきだ。
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