俺様執事に全てを奪われてⅡ

元サイド

何なんだ、あいつは…

何をどうしたら、俺が浮気をしていると勘違いできるんだよっ

俺は執務室に大股で戻りながら、苛々した気持ちを落ち着かせようとした

しかし、苛々は増すばかりで、落ち着くことすらしなかった

荒々しくドアを開閉すると、回転椅子でどかっと尻を落とした

足と手を組んで、スクリーンセーバになっているパソコンの画面を睨んだ

「何が、『妻の妊娠中に、夫の浮気が一番多い』だよ。んな、雑誌を真に受けてんじゃねえよ。俺は例外だ」

乙葉が欲しくて、ずっと既成事実が欲しかった

俺から逃げられないモノを作っておきたかった

俺の子を妊娠していれば、乙葉は俺を見てくれると思ったのに…これじゃあ、逆効果かじゃねえかよ

喧嘩してんじゃ、意味がねえ

「…てか、ナツは乙葉に何を言ったんだ?」

俺は携帯を取り出すと、ナツに電話した

『もしもし? 勝手に切らないでよっ』

不機嫌な声で、ナツが出た

「あ? 電波が悪かったんだよ。ブツブツ切れて、お前が何を言ってんのかもよくわからねえし。何だったんだよ」

『電波が悪いって、どこに居たのよ』

「地下だよ。ワインの倉庫でチェックしたんだ」

『まったく、また仕事してるの? 元らしくなく仕事熱心じゃない。そんなにお嬢様は煩いのかしら?』

「別に。俺の勝手だろ」

『あら? どうして隠すの? お嬢様の我儘で、今日の飲みも早く帰ったんでしょ? 元は、飲むの好きなのに。煙草だって。誰かのために、自分を犠牲にするなんて、元らしくないわ』

ふうん、そういうことか

だから、乙葉が怒ったんだ

『我儘すぎるのよね。学校でも……』

「ナツ、俺は自分を犠牲にしているとは思ってない。煙草も酒も、別にいらない」

『奥さんは?』

「は?」

『知ってるの? お嬢様に振りまわされてたら、元と過ごす時間がないじゃない』

そっか…ナツは、知らないんだよな

俺と乙葉の結婚を

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