みどりちゃんの初恋
怪訝そうに眉を潜めた千紗の上から退いた樹はインターホンに歩み寄る。 この時間とチャイム連打なら、異母兄弟の雄太郎だろう、と軽い予想をつけて。
「はーい。どちら様で――」
『ちぃぃぃいいっ』
「っえ?! みどりさん?!」
インターホンの向こうで泣き叫ぶのは、千紗の幼なじみ兼親友のみどり。
こんな時間に一体どうしたのかと、玄関にすっとんで行った千紗は、わあんわあん泣くみどりをリビングに引っ張って来た。
当のみどりは「いきなりきて……ごめんなさ……い。邪魔してごめんなさ……」と知るはずもない樹の下心を見透かした。
「みどりどうしたの?あおちゃんとケンカでもしたの?」
あおちゃんとはみどりの3つ下の妹、笠井あおい。
「……違っう。……あおいじゃ……ひっく……ない」
しゃくり上げるみどりは、手の甲で自分の頬を擦る。しかし、なかなか頬は乾かない。
ずびーっと樹から受け取ったティッシュで鼻をかみ終わった後、
「……ヒロっちに……嫌われちゃった……かも……しれなっ……いの」
目を真っ赤にしながら再び顔を歪ませた。