白いジャージ2 ~先生と青い空~



旅館に到着すると、吐き気が止まらなかった。




怖くて

不安で…



もうお父さんがいない…

そんな気がして何度も吐いた。




食欲もない。

眠くもない。



朝方になって、ひとつのベッドに3人で並んで寝た。


「最初で最後ですね。この3人で同じベッドで寝るなんて。」


先生は明るい声で言った。



「そうね。本当にもうないわね。」

お母さんは私の手を握った。



私が眠れなくて寝返りを打つたびに、先生が私の頭を撫でてくれた。



左からはお母さん。


右からは先生の…大きな愛を感じていた。



もう朝なんて来てほしくない。

心からそう思った。




もう何もかも忘れたい。




もう嫌だ…




お父さんのあんな姿、見ていられないよ。



お父さん


お父さん…





天蓋付きのアラビアンなベッド。



お父さんが気に入って選んだこの旅館。




朝焼けが美しくて、遠くに富士山が見えた。



3人で大きな窓の前に立つ。



お父さんが楽しみにしていたこの景色を

私達3人が代わりに目に焼き付けた。



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