負け組女子高生
桜もすっかり散りはて、高校生活二度目の夏が訪れようとしていた。

「やだな学校。」

私は重い足を前にすすめる。

どれだけ学校が嫌でも、サボる勇気なんて私にはない。

一日でも休んで次の日私に対するみんなの態度が違ったら、なんて考えると吐血してでも学校に行かなければと思う。

それどころか私は、我が校の生徒が登校する電車より1本早い電車に乗り、誰よりも早く登校する。

生徒の集まった教室で、「おはよう」と言いながら愛想笑いなんてふりまいて教室の奥の席まで到着するのが嫌だからだ。

それなら一番に教室に着いて、続々と登校してくるクラスメイトをメールするふりでもして受け流す方がよっぽど楽だ。

電車とバスを乗り継ぎ学校に到着すると、教室の電気をつけ奥の席に直行した。
私はカバンから筆箱を引っぱりだし、一時間目の英語で提出しないといけないプリントをやりはじめた。


ガラガラ。

数分たつと、教室の扉が開いた。

私は宿題に夢中なふりをして顔をあげなかった。

入ってきた奴が席に着いたのを見計らって、私は誰が登校したのかちらりと確認した。

予定外な事に席についたそいつはカバンを持ち上げようとしていて目があってしまった。

沢田たかしだ。

不良でもオタクでもない、いわば中間派で陸上部の彼は、私と同じく宿題のために速めに登校したらしい。
「おおはよう。」

とっさに挨拶をしたせいでどもってしまった。

「…おはよう」

虫のささやくような声で返事をした彼はふいっと机に目を戻した。

なんだよもう。

もうちょっとタイミング見計らってみればよかった。
私は再び自分の宿題に目を戻した。
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