境界
【第7章】吾郎との再会
(第5章のつづき)

「榎坂吾郎という男とは、どこで接点があったんだ?」

「近所だから、名前は何となく聞いたことがあったんだけど、
顔まではよく知らなかったの?
それが、ある時、駅前で声をかけられて…。」

「それって、ただのナンパじゃないか?
声をかけられて、ホイホイとついていったのか?」

「ホイホイとはついていっていないわよ。
ただ、その時はあなたと喧嘩をして、むしゃくしゃしていたし、
お茶ぐらいだけならと思って…」

「それで、結局はついていったのか?」

「ナンパ慣れしてると言うか、誘い方がうまくて、それでいて強引なところもあって、つい…」

「あきれてモノも言えないよ。」

「でも、これだけは信じて、本当にその時はお茶だけのつもりだったの。
実際、その日はお茶だけで帰ってきたよ。」

「それがどうして不倫まで発展するの?」

「お茶した時に、メールアドレスを交換してしまったの?
それは今でも後悔してる。
軽率だったと思ってる。」

「それで、その後は?」

「なんだか尋問みたいで、イヤ。」

「何言ってるんだ。自分のしたことがわかってるのか?」

「わかってるわよ。だから、あなたに悪いことをしたと思って、今反省してるのよ。
聞きたくないなら、もう話さないわよ。」

 なんだか自分勝手で腑に落ちないところもあったが、
渋々納得して、幸子の話を聞くことにした。



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